住宅ローンの金利が今より低くなるなら、借り換えた方が得に見えます。ただ、実際には新しいローンの事務手数料、登記費用、今のローンを完済する費用がかかります。
そのため、金利だけを比べて決めると「毎月返済額は下がったのに、諸費用を回収できなかった」ということがあります。反対に、金利を下げるだけでなく、変動から固定へ移して金利上昇リスクを減らす借り換えもあります。
結論から言うと、借り換えは新旧ローンの総返済額と諸費用を、同じ残り期間で比較することが基本です。この記事では、得になりやすい条件、費用、審査、手続き、私が考える判断順を整理します。
住宅ローンの借り換えとは、新しいローンで今のローンを完済すること
住宅ローンの借り換えとは、別の金融機関などで新しい住宅ローンを契約し、その資金で現在のローンを一括返済することです。単なる金利タイプ変更と違い、審査、契約、抵当権の抹消・設定をやり直します。
主な目的は、金利を下げて毎月返済額や総利息を減らすことです。ただし近年は、変動金利の上昇が不安になり、固定期間選択型や全期間固定へ移る目的もあります。返済期間を短くする、団信を充実させる、使い勝手のよい金融機関へ移ることも借り換えの効果です。
現在の金融機関で金利タイプだけを変更できる場合は、新規借り換えより費用が少ないことがあります。まず今の銀行へ条件変更を相談し、その条件と他行への借り換えを並べると無駄がありません。
2025年調査では借り換え後の変動型が57.9%
住宅金融支援機構の2025年4月調査は、2024年4月から2025年3月までに借り換えた591人を対象にしています。借り換え前は変動型49.2%、固定期間選択型41.6%、全期間固定型9.1%でした。
借り換え後は変動型57.9%、固定期間選択型35.4%、全期間固定型6.8%です。低い金利を求めて変動へ移る流れは強い一方、固定期間選択型へ借り換えた人の理由では「今後の金利上昇や毎月返済額増加が不安」が33.5%で最も多くなりました。
借り換えは金利を下げる手続きだけでなく、将来の金利リスクを選び直す機会です。目先の適用金利だけでなく、10年後までどのリスクを持つかを考える必要があります。

借り換えで得になりやすい三つの条件
以前からよく使われる目安は「金利差1%以上、ローン残高1,000万円以上、残り期間10年以上」です。三菱UFJ銀行も借り換えを検討しやすい条件としてこの三つを案内しています。
ただし、これは検討を始める目安であり、合否ラインではありません。残高が大きく残り期間が長ければ、金利差が0.5%程度でも諸費用を上回ることがあります。反対に、残高が少なく完済まで数年なら、1%下がっても効果は限られます。
- 現在残高と残り返済期間が十分にある
- 新しい金利で減る利息が諸費用を上回る
- 団信・手数料・繰上返済条件も改善する
2,000万円・残り25年・金利差1%ならどうなる?
三菱UFJ銀行は、残高2,000万円、残り25年、金利差1%の例で、年間返済額が約10万円減り、諸費用62万円を含めても25年間で約200万円軽減する試算を掲載しています。元利均等、ボーナス返済なし、金利が期間中変わらない前提です。
重要なのは「約200万円」という結果を自分のローンへそのまま当てはめないことです。変動金利は将来変わり、保証料の返戻、事務手数料、繰上返済手数料、団信上乗せ金利も商品ごとに異なります。
比較するときは、現在と借り換え後の返済期間をそろえます。借り換え後だけ期間を延ばせば毎月返済額は下がりますが、それは金利低下ではなく返済を先送りした効果も含みます。総返済額、諸費用、完済年齢の三つを同時に見たいです。
借り換えにかかる費用は新規借入とほぼ同じ
借り換えでは、新しい金融機関の事務手数料または保証料、金銭消費貸借契約の印紙税、抵当権設定の登録免許税、司法書士報酬がかかります。今のローン側では全額繰上返済手数料、抵当権抹消の登録免許税・司法書士報酬などが必要です。
金融機関によっては諸費用を新しいローンへ上乗せできます。ただし、借入額が増えればその費用にも利息がかかります。住宅ローン控除では、借り換えに伴う諸費用部分が控除対象外になる場合もあるため、残高証明書だけで判断せず確認が必要です。
費用の項目と4,000万円を借りる場合の目安は、住宅ローンの種類を整理したまとめページからも確認できます。商品比較では表示金利と費用を分けず、実質的な総コストで見ることが大切です。
借り換え後も住宅ローン控除を続けるには、新しいローンが当初の住宅ローン返済のためのもので、返済期間が10年以上あるなどの要件を満たす必要があります。借り換えで控除期間が最初から数え直されるわけではありません。新しい年末残高が借り換え直前の残高を上回る場合は、控除対象額を調整して計算することがあります。
控除期間中は「借り換えで減る利息」と「控除額がどう変わるか」を両方見ます。ただし控除を多く受けるためだけに高い金利を払い続けるのは本末転倒です。税額、残高、借り換え費用を個別に試算し、最終的な手取り差で比べます。
借り換えは再審査。健康状態と住宅価値にも注意する
借り換えは新規契約なので、年収、勤務先、勤続年数、他の借入、返済履歴を改めて審査されます。転職直後、収入減少、車のローン増加などで、住宅購入時より条件が厳しくなることがあります。
団信にも再加入します。現在のローン契約後に病気をした場合、希望する団信へ入れず借り換えできない可能性があります。逆に、健康状態に問題がなければ、がん保障や全疾病保障などを見直す機会になります。
建物の担保評価が下がり、ローン残高が評価額を上回ると、希望額を借りられないこともあります。借り換え効果を計算した後に、事前審査を複数行へ出して実際の提示条件を比べる流れが現実的です。

借り換えの流れは、試算・事前審査・契約・同日決済
最初に現在の返済予定表から、残高、適用金利、残り期間、完済予定日を確認します。次に2〜3行で借り換え後の総返済額と諸費用を試算し、事前審査へ進みます。2025年調査では借り換え先を一つしか検討しなかった人が43.8%でしたが、一つだけでは提示条件の良し悪しを判断しにくいです。
本審査後に新しい金融機関と契約し、現在の金融機関へ全額繰上返済を申し込みます。融資実行日に新ローンの資金で旧ローンを完済し、旧抵当権を抹消、新しい抵当権を設定します。日程調整は金融機関と司法書士が関わるため、余裕を持って進めます。
比較表には、適用金利だけでなく、事務手数料、保証料、団信、繰上返済手数料、口座利用条件も入れます。給与振込やクレジットカード利用が金利優遇の条件なら、その管理負担も契約の一部です。最初の提示金利ではなく、自分が実際に受けられる優遇後金利で計算します。
私の考え:借り換えは利益確定ではなく、家計の再設計
私は、数十万円だけ得するために手元資金を大きく減らす借り換えには慎重です。住宅ローンは長期なので、試算上の利益より、病気、転職、教育費などに対応できる現金の方が助けになる場面があります。
一方で、諸費用を払っても明確な差があり、団信や金利タイプまで改善するなら、借り換えは強い選択肢です。特に固定期間終了前や、変動金利の上昇で返済計画が不安になった時は、何もしないことも一つの選択として数字で比較した方がよいと思います。
借り換えの目的を「最安金利」ではなく「完済まで無理なく続く契約」に置く。その方が、短期の金利競争に振り回されにくくなります。
住宅ローン借り換えのよくある質問
まとめ:金利差ではなく、諸費用後の総額で決める
住宅ローンの借り換えは、金利差、残高、残り期間が大きいほど効果が出やすくなります。ただし、新しいローンの手数料や登記費用、旧ローンの完済費用を引いた後に利益が残ることが条件です。
現在の契約内容を確認し、同じ残り期間で複数行を比較する。そこへ団信、金利上昇リスク、完済年齢、手元資金を重ねる。この順番なら「低金利だから」という一つの理由だけで決めずに済みます。
