住宅価格が上がり、夫婦どちらか一人の収入では希望額に届かないとき、候補になるのが住宅ローンの「収入合算」です。
申込人の収入に配偶者や親族の収入を加えて審査を受けるため、単独ローンより借入可能額を増やしやすくなります。ローン契約を2本結ぶペアローンより、契約や諸費用を抑えやすい場合もあります。
ただし、収入合算には「連帯保証型」と「連帯債務型」があります。どちらを扱うかは金融機関や商品によって異なり、住宅ローン控除、団信、所有持分、返済義務の範囲も同じではありません。
結論から言うと、収入合算はローンが1本だから簡単、とは限りません。合算者が債務者なのか保証人なのか、誰が控除と団信の対象になるのかを確認して選ぶ必要があります。
収入合算とは、申込人に家族の収入を加えて審査する方法
収入合算は、住宅ローン申込人の年収に、配偶者や親子など一定範囲の親族の年収を加えて借入可能額を計算する方法です。申込人だけの収入では希望額に届かない場合に利用されます。
合算できる人、年収の割合、同居要件、年齢、勤続年数は金融機関によって違います。年収を全額合算できるとは限りません。たとえば三菱UFJ銀行の収入合算では、合算できる金額の上限を申込人の収入の2分の1と案内しています。
住宅金融支援機構の2026年1月調査では、2025年4月から9月に住宅ローンを借りた1,237人のうち、収入合算の利用は14.6%、ペアローンは24.1%でした。両方を合わせると38.7%で、夫婦など複数人の収入を使う借り方は珍しくありません。
収入合算には連帯保証型と連帯債務型がある
連帯保証型:債務者は一人、合算者は連帯保証人
連帯保証型では、住宅ローンを借りる主債務者は一人です。収入を合算する配偶者などは連帯保証人となり、主債務者が返済できない場合に返済義務を負います。
ローン契約は原則として1本です。住宅ローン控除と団信の対象は、基本的に主債務者だけです。連帯保証人は自分の収入を審査へ使っていても、住宅ローンの債務者ではないため、同じ扱いにはなりません。
連帯債務型:二人が一つのローンの債務者になる
連帯債務型では、主債務者と連帯債務者が一つの住宅ローンについて返済義務を負います。フラット35などで利用される形です。
それぞれが要件を満たし、住宅の持分と実際の債務負担がある場合、二人とも住宅ローン控除の対象になり得ます。ただし、控除対象額はローン残高を単純に半分にするのではなく、各自の持分と内部的な負担割合などを基に計算します。
団信は商品によって異なります。主債務者だけが加入する商品もあれば、夫婦連生団信など二人を保障する仕組みもあります。連帯債務だから二人とも自動的に同じ保障を受けられる、とは考えない方が安全です。

収入合算とペアローンの違い
| 比較項目 | 収入合算・連帯保証型 | 収入合算・連帯債務型 | ペアローン |
|---|---|---|---|
| ローン契約 | 1本 | 1本 | 2本 |
| 債務者 | 1人 | 2人 | 2人 |
| 合算者の立場 | 連帯保証人 | 連帯債務者 | 別契約の債務者 |
| 住宅ローン控除 | 原則、主債務者 | 要件を満たせば二人 | 要件を満たせば二人 |
| 団信 | 原則、主債務者 | 商品による | それぞれ加入 |
| 金利・期間 | 1種類 | 1種類 | 別々に設定できる場合あり |
| 諸費用 | 1本分が基本 | 1本分が基本 | 2本分かかる項目あり |
ペアローンは、夫婦などがそれぞれ住宅ローンを契約します。二人とも債務者で、各自が団信へ加入し、要件を満たせば住宅ローン控除もそれぞれ利用できます。一方で事務手数料や登記費用などが2本分かかる項目があります。
収入合算は契約を1本にまとめやすいものの、連帯保証型では合算者が控除や団信の対象にならない点が大きな違いです。ペアローンの利用割合、離婚時の売却・借り換えはペアローンのメリット・デメリットと離婚時の注意点で整理しています。
収入合算のメリット
- 単独ローンより借入可能額を増やしやすい
- ペアローンより契約本数と諸費用を抑えやすい
- 返済口座や金利タイプを一つにまとめやすい
- 連帯債務型では二人が控除を利用できる可能性がある
一番のメリットは、世帯の収入を審査へ反映できることです。住宅価格や土地価格が上がるなか、単独ローンでは必要な広さや通勤圏に届かない家庭にとって現実的な選択肢です。
ペアローンと比べ、ローン契約を1本にできる点も分かりやすさにつながります。ただし、借入可能額が増えることと、無理なく返せることは別です。
デメリットは、二人の収入が続く前提になりやすいこと
収入合算で借入額を増やすと、出産、育休、時短勤務、転職、介護、病気などで片方の収入が減ったときに返済が重くなります。審査時点では共働きでも、35年間同じ働き方が続くとは限りません。
連帯保証型では、収入合算者に万が一のことがあっても、主債務者のローンは団信で消えません。家計は合算者の収入を失いながら、同じ返済を続ける可能性があります。
連帯債務型でも、団信が主債務者だけを保障する商品なら、連帯債務者に万が一のことがあった場合に返済は残ります。死亡だけでなく、長期の休職や収入減少も含めて保障と生活防衛資金を考えたいです。
収入を合算できる上限まで借りないことが重要です。片方の手取りが7割になったケースでも、毎月赤字にならない借入額を先に確認します。
住宅ローン控除と所有持分は負担割合に合わせる
連帯債務型では、住宅の所有持分、頭金、借入金の負担割合をそろえることが大切です。国税庁は、共有住宅を連帯債務で取得した場合、当事者間の内部的な負担割合と持分に応じて、それぞれの住宅ローン控除対象額が変わると説明しています。
たとえば夫婦で住宅を2分の1ずつ所有していても、ローンを夫6・妻4で負担するなら、二人が同じ残高を控除へ使えるわけではありません。持分以上の取得資金を負担しても、控除対象額に上限が生じる場合があります。
また、実際の資金負担と登記持分が大きくずれると、夫婦間の贈与として税務上の確認が必要になる可能性があります。契約前に金融機関、司法書士、税務署、必要に応じて税理士へ確認してください。

収入合算が向いている人・ペアローンが向いている人
| 状況 | 検討しやすい方法 |
|---|---|
| 契約と諸費用をなるべく一つにまとめたい | 収入合算 |
| 主債務者の収入が中心で、合算は補助的 | 連帯保証型 |
| 二人で返済し、二人とも控除を検討したい | 連帯債務型 |
| 二人が別々の金利・期間を選びたい | ペアローン |
| 二人とも団信へ個別に加入したい | ペアローン |
| 将来どちらかの収入が大きく減る予定 | 単独ローンも含め借入額を再検討 |
収入に差があり、合算者の収入を少しだけ審査へ加えたい場合は、連帯保証型が分かりやすいことがあります。二人が同程度に返済し、控除と所有持分も分けたいなら、連帯債務型やペアローンが候補になります。
ただし、商品名だけでは決められません。団信の保障範囲、合算上限、金利、事務手数料、将来の単独借り換えまで含めて比較します。
離婚しても連帯保証・連帯債務は自動で消えない
収入合算で見落としやすいのが離婚時の扱いです。夫婦の間で「家とローンは夫が引き継ぐ」と合意しても、金融機関との契約が自動で変更されるわけではありません。
連帯保証型では、金融機関が連帯保証人を外すことを承認しない限り、離婚後も保証責任が残る可能性があります。連帯債務型でも、どちらか一人を債務者から外すには、単独での借り換えや債務引受について金融機関の審査が必要です。
家を売却して完済する場合も、売却価格が残高を下回れば不足額を用意しなければなりません。一人が住み続ける場合は、その人の収入だけでローンを維持できるか、所有名義をどうするか、団信をどう組み直すかを確認します。
離婚を前提に家を買う必要はありませんが、長期契約の出口を決めることは現実的です。契約時の負担割合、頭金、返済記録、所有持分を残しておくと、将来の話し合いで整理しやすくなります。
契約前に金融機関へ確認したいこと
- 連帯保証型と連帯債務型のどちらか
- 合算できる人と年収の上限
- 住宅ローン控除の対象者と計算方法
- 団信へ加入する人と保障される残高
- 所有持分と実際の返済負担割合
- 離婚・死亡・収入減少時の手続
- 将来一人のローンへ借り換えられる条件
私は、収入合算を借入上限を引き上げる手段として先に使うのは慎重に考えたいです。まず月々の支払いから無理のない借入額を決め、その金額を実現する方法として収入合算を選ぶ順番がよいと思います。
金融機関には、二人の収入で借りられる最大額だけでなく、主債務者一人の収入で借りられる額と、合算額を半分にした案も出してもらうと、借入額を増やした影響が見えます。
まとめ:合算する収入より、誰が何を負うかを見る
住宅ローンの収入合算は、申込人の収入に配偶者や親族の収入を加え、借入可能額を増やす方法です。連帯保証型と連帯債務型があり、債務者、住宅ローン控除、団信の扱いが異なります。
ペアローンは契約が2本、収入合算は原則1本ですが、ローン本数だけで有利不利は決まりません。二人の働き方、控除、団信、持分、収入減少時の返済まで比べる必要があります。
収入合算を選ぶなら、「いくら借りられるか」より先に、「合算者は保証人か債務者か」「片方の収入が減っても返せるか」「万が一のときにどの残高が消えるか」を確認する。この3点が、後悔を減らす分かれ目だと思います。

主な確認資料
